実際のところ、大半の人にとって、小麦粉はご飯と同じようなものであり、特別に避ける必要はありません。
ただし、一部の限られた人にとっては、小麦粉のグルテンが体に悪影響を与えることも事実です。
「グルテンフリー=健康的」という誤解
グルテンを避けて健康効果が得られるのは、セリアック病やグルテン過敏症を持つ一部の人だけです。
これらの疾患を持たない大半の健康な人にとって、グルテンを避けることは無意味です。
メディアやダイエットブームが「グルテンフリー=健康的」という誤解を広めましたが、これは科学的な根拠に基づいているわけではありません。
小麦粉のグルテンを避けるべき人たち
セリアック病患者
セリアック病は、グルテンを摂取すると免疫系が小腸を攻撃してしまう自己免疫疾患です。この病気の人は、グルテンを完全に避ける必要があります。セリアック病は、全人口の約1%が罹患しているとされています。
小麦アレルギー患者
小麦アレルギーは、免疫系が小麦に反応してアレルギー反応を引き起こす状態です。小麦アレルギーの割合は全人口の約0.2%~1%程度です。
グルテン過敏症
セリアック病や小麦アレルギーではないが、グルテンを摂取すると消化不良、頭痛、疲労などの症状が現れる人がいます。グルテン過敏症は明確な診断が難しいため、正確な割合は不明ですが、人口の約0.5%~6%と推定されています。この場合、グルテンを完全に避ける必要はないかもしれませんが、グルテンを含む食品を減らすことで症状が軽減されることがあります。
大半の人はグルテンを気にせず小麦粉を食べてもOK
セリアック病やグルテン過敏症、小麦アレルギーを持たない9割の人にとっては、グルテンを避けることによる健康上のメリットはありません。大半の人にとって、小麦粉はご飯と同じように普通に消化されます。
小麦粉のGI値が高いという話は、「グルテンが悪」という論点とは異なり、ご飯にも当てはまる視点です。
なぜ小麦粉がやり玉に上がったのか?
そもそも、すべての食品がすべての人に対して安全とは限りません。一定数の人々には、体に合わない食品があります。以下は、食品アレルギーの保有率のトップ6です。
アレルギー保有率トップ6
- 卵:8%
- 牛乳:3%
- 小麦:1%
- ピーナッツ:1%
- 大豆:0.6%
- そば:0.5%
食品アレルギーの保有率で1位と2位の卵や牛乳を差し置いて、3位の小麦粉が悪者にされているのはなぜか。これは、小麦粉を避けることを推奨する「グルテンフリー」マーケティングが広まっているからです。
グルテンフリーが一部の人々にとって有益であるのは事実ですが、「グルテンフリー=健康」という誤解に踊らされている人も多いのが現状です。実際には、9割の人にとってグルテンを避けることは無意味です。
大げさすぎる!グルテンに関するデマ
「日本人の7~8割にグルテン不耐症の可能性がある」という誇張
これは誇張された情報です。信頼できる研究やデータによれば、グルテン不耐症やグルテン過敏症の発症率は非常に低く、多く見積もっても全人口の1%未満です。7〜8割という数字は極めて非現実的であり、日本人全体に適用されるものではありません。
「グルテンは腸の粘膜に張りついて消化に悪い」という勘違い
これは間違った情報です。実際、グルテンは多くの人々にとって消化可能なタンパク質であり、健康に悪影響を与えることはありません。グルテンとは、小麦粉に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という2つのタンパク質が絡み合ってできる成分で、食品に粘り気と弾力を与えます。粘り気があるから腸に張り付くなんて、連想ゲームに過ぎません。
「グルテンにはニコチンのような依存性がある」という誤解
これは完全に誤解です。グルテンがニコチンのような依存性を持つという科学的な証拠はありません。パンや小麦製品を好む人が多いのは事実ですが、それは単に美味しいからです。
小麦粉が体質に合わない人がいることも忘れてはいけない
「グルテンフリーは健康的」という主張は、マーケティングによる誇張が多い一方で、小麦粉のグルテンが体に合わず、本当に食べられない人がいることも忘れてはいけません。
私はパンが大好きですが、このような考え方は違うと思います。
体に合う食べ物は人それぞれです。グルテンに問題がない人はパンを楽しめばいいですし、体に合わない人は無理に食べる必要はありません。大切なのは、自分の体質に合った選択をすることです。